読書記録⑨薬丸岳『友罪』

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今年9冊目に読んだ小説は、薬丸岳さんの『友罪』です。

薬丸さんの小説を初めて読んだのは、もうかれこれ10年近く前になるかも。長男の出産後、しばらく読書から遠ざかっていたのですが、「久々に本が読みたいなぁ」と思って図書館で借りたのが『天使のナイフ』。

読んだことのない作家さんの本を読もう…と選んだのですが、読んでみるとものすごく衝撃的で、めちゃくちゃ気分が沈んだんですよね。

それでも、さらにもう一冊、立て続けに読みたくなって『虚夢』を読んだのですが、またまた気分がズドーンと沈んでしまって…。

みずたま
みずたま

「ズドーンとくるで、絶対!」と分かってながらも読んじゃった…みたいな。

 

ズドーン2連発はさすがにキツく、「もう一冊読もう!」とはなれず、「これも読みたいなぁ」と思いながら読めていなかったのが『友罪』です。

みずたま
みずたま

「また絶対、ズドーンとくるで。間違いなくズドーンやで。」と

思いながら、久方ぶりの薬丸作品!

 

結構ボリュームのある作品だし、きっとこの作品もズドーンと気持ちが重くなりそうだし、読むのに時間がかかるかも…と思っていたのですが、読み始めると先の展開が気になって、あっという間に読了。そんな『友罪』のレビューです。

 

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『友罪』のあらすじは?

裏表紙に記載されているあらすじって、「読みたい願望」を掻き立てられるものですよね。作品の良さをギュッと凝縮して、「読みたくなるでしょ!?」と挑発されているような気分になるのですが、『友罪』のあらすじもそう。

みずたま
みずたま

あらすじ一文目で「なになに?もっと詳しく教えてくれる?」ってなってまうー!

 

そんな「読みたい願望」を挑発しまくりのあらすじがコチラ。

 

あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり───。

少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。

 

いきなり「あなたなら、どうする?」と問いかけられます。だんだんと仲が良くなってきた同僚が、もしかするとあの恐ろしい「黒蛇神事件」の犯人かもよ…って。

それでも友達でいられる?いや、その前に本当に彼が犯人なのか?

めちゃくちゃ疑心暗鬼になるだろうし、普通に接することなんてできなくなるだろうし、もしも本当だったら怖い…。でも、まさか彼がそんな事をした人だなんて…。

みずたま
みずたま

「自分ならどうするか?」

想像するだけで心が荒海状態…。

「知らぬが仏」って言うけど、知らないままでいられたら…と思ってしまうけれども、それでは話になりません。気になる『友罪』のストーリー、もう少し詳しくご紹介します!

 

 

『友罪』ってどんな本?

まずストーリーの始まりは、主人公の益田 純一が面接を受けるシーンから始まります。「寮があるから」という理由で受けた会社の面接で、益田は鈴木と出会います。

採用予定は一人と聞いていたけれど、益田と鈴木は同日に入社することになり、二人とも会社の寮で暮らすことに。寮には寮長の山内と、益田たちよりも年上の清水、年下の内海が住んでおり、5人での共同生活がスタート。

せっかく歓迎会を開いてくれても鈴木の態度はそっけなく、さらに鈴木は夜になると尋常ではない「唸り声」をあげる。入社が決まったのは良かったものの、なんとも気が滅入るような新生活が始まります。

2章に入ると、急に視点が益田から藤沢 美代子という女性に変わります。あらすじには美代子の名前は出てこないし、重要登場人物として女の子が出てくるとは思っていなかったので、ちょっとビックリ。

鈴木がワケアリなのは裏表紙のあらすじを読んでわかってはいるものの、彼女もかなりワケアリ感が強いです。2章ではそんなワケアリ感満載の美代子が、鈴木に対して「どこか自分に似てる」という気持ちを持つように。

みずたま
みずたま

もしかして、これって恋愛に発展するフラグちゃうん!?

3章では物語が大きく進み始めます。鈴木が夜中にひどくうなされている事を指摘した益田は、「自分だってうなされている」と鈴木に言い返されます。

そう、益田にも心に抱えているものがあったのです。中学時代、自殺をしてしまった友人がいる。その友人がなんとなく鈴木と似ているから、鈴木のことが気になる…と話す益田に、「もし僕が自殺をしたら悲しいと感じる?」と聞く鈴木。

ぶっちゃけ、この時点ではまだ友情を育んでいる関係性ではない二人なのですが、中学時代に自殺をしてしまった友人と鈴木を思い重ねてしまう益田は「悲しいに決まってる」と答えます。

この一言がキッカケで、鈴木は益田に心を開き始めるのです。

それ以降、鈴木は益田だけではなく清水や内海たちとも良い関係を築きはじめ、美代子ともいい感じになっていきます。

みずたま
みずたま

ちょっとそこは素直に喜べない!!

鈴木に恋した美代子、絶対悲しい展開になるんちゃうん?

またこの後、鈴木の医療少年院時代、母親のように彼の更生に携わっていた白石 弥生という人物も登場します。

鈴木の現在が気になる弥生は、「鈴木の近況をこっそり教えてほしい」と益田に接触します。そこから急激に鈴木の過去に不信感を持ち始める益田。

もしかして鈴木は「黒蛇神事件」の犯人なのでは?

そんな疑惑を抱えたまま、普通に友達として親しくするなんて到底無理ですよね。益田は真実を知るべく、彼の過去を調べ始めます。

その結果、疑惑は確信に。

みずたま
みずたま

あぁ〜やっぱりか…いや、わかっててん。

わかっててんけど、違ってて欲しかったっていう気にもなるやん!?

もしこの事実を美代子が知ったら、切なすぎん!?

この後、真実を知ったというだけでは終わらず、この事実を記事にしてほしいと言われる益田。益田はジャーナリスト志望だったのですが、人の過去を面白おかしくネタにして儲けることに納得がいかず、アルバイト先の出版社でひと悶着を起こしてしまった過去があるんです。

そんな益田はこの時も鈴木に関する記事を書くことに抵抗を感じます。結局、一大スクープにふさわしい衝撃的な記事を書くことはできず、益田の話を元に大学時代の先輩ジャーナリストが書いたセンセーショナルな記事が世に出ることに。

鈴木が黒蛇神事件の犯人だということが週刊誌に載ったのを機に、鈴木は置き手紙を残して姿を消します。

鈴木が黒蛇神事件の犯人だという事を知った美代子は複雑ですよね…。最後に鈴木からかかってきた電話で話せたことは良かったと思うけど、とにかく切ない。鈴木のことを週刊誌に公表した益田を責めてしまうのも当然です。

でも美代子に責められた益田は、こう答えます。「恐れないで踏み出すことにした」と。

益田が踏み出した一歩とは、鈴木への一通の手紙です。益田が本心で鈴木に語りかけた言葉で、この物語は締めくくられています。

みずたま
みずたま

この小説、映画化もされてたんや!

映画版も見てみたい!!

 

感想まとめ

この『友罪』という物語、大きくは益田・美代子・弥生という3人の視点で物語が進みます。それぞれ心に抱えている問題があり、その問題との向き合い方に鈴木が大きく関与してくる。

逆に言えば、そうであるからこそ鈴木に対して真摯に向き合えたんですよね。

ここからはネタバレを含みますので、未読の方はスルーして下さい!

鈴木が黒蛇神事件の犯人だと知った途端、態度を激変させた社長や、鈴木に関するネタを週刊誌に売りつける清水などは、読んでいてすごく軽薄な人に感じてしまいますが、実際、そんなもんかもなぁ…という気もします。

これまでの印象が決して悪くなかった人でも、恐ろしく残虐な殺人を犯した人だと知れば、手のひらを返したような態度にもなるだろうし、その人との接点を面白おかしくネタにして人に披露したりする気持ちもわからないわけではない。

それもこれも、鈴木の視点では何も語られていないから…というのも大きいですよね。そう、この小説、鈴木の視点では描かれていないんです。

彼がどうしてあんな事件を起こしてしまったのか?本当に彼は更生したのか?それがわからないから、いくらそれまでの印象が悪くなくても「凶悪犯」としか見られないだろうし、彼との接点は「売れるネタ」になる。

益田のように過去に大きな後悔があるなら、「やり直したい」「やり直すキッカケを与えてほしい」と思うし、人にも「やり直せてもいいはず」だと思うでしょう。

また過去に大きなキズを負った美代子は、鈴木に心を救われました。過去に恐ろしい殺人を犯した犯罪者に。

何も悪いことはしてない。逃げる必要なんてない。

単純なことだけど、美代子がそれを実行するのは簡単なことではありません。それでも、逃げずに生きていく決心をした美代子は強い。

できるなら、美代子と鈴木、2人で生きていく未来があって欲しかったです。そこだけは本当に心残り!!

弥生に関しては、「めでたしめでたし」ですよね。何よりも大切に思っていた息子と、本当の親子関係を築けて良かった!

そして、益田。

もし自分が彼の立場だったら───。

この小説を読んだら、それを考えずにはいられませんよね。いくら考えたところで、実際にそうなってみないとわからないものだとは思いますが。

彼が出した決断に、本当に感動しました。どうか益田の手紙が鈴木に届きますように。

大なり小なり罪の意識を抱えていること、ありますよね。何が「正解」かはわからなくとも、大切なのは自分が犯した罪から目をそらさず、償いを探しながら生きることなんだ…と教えてもらえたお話でした。

鈴木が初めて自分の居場所を見つけて、「生きる」実感を得られたのに。美代子と幸せな未来があったかもしれないのに。

そう思うと、鈴木が黒蛇神事件の犯人だなんて知らずにすめばよかったのに…というやりきれなさや切なさが強烈にこみ上げてきますが、益田も美代子も前向きに一歩を踏み出せたことで光明がさしたような気持ちにもなりました。

みずたま
みずたま

切ないけど、思ってたほどズドーンではなくて良かったーー!!

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