読書記録⑦角田光代『八日目の蟬』

スポンサーリンク

今年7冊目の読書は、角田光代さんの『八日目の蟬』です。

角田さんの小説はこれが初めて。知人におすすめの小説を聞いたところ、角田光代さんを教えてくれました。

早速、古本屋に角田さんの小説を探しに行き、選んだのが『八日目の蟬』。

『八日目の蟬』は映画化されている事は知っていましたが、内容については全く知らなかったんです。

映画化されているくらいだから、面白いに違いない!

そんな程度の理由でこの小説を選んだのですが、本当に面白かったです。続きが気になるし、結末が気になるしで、あっという間に読み終えてしまいました。

そんな『八日目の蟬』のレビューです。

 

スポンサーリンク

 

『八日目の蟬』ってどんな本?

『八日目の蟬』は0章・1章・2章からなる物語です。0章と1章は「希和子」という女性の視点でストーリーが進み、1章の最後から2章は「薫・恵里菜」の視点に変わります。

物語の始まりは、希和子が薫(恵理菜)を誘拐してしまう…という衝撃的な事件となっています。

誘拐した赤ちゃんの本当の名前は恵理菜。ですが希和子は自分が子供につけようと思っていた薫という名前で、彼女を我が子のように育てます。

裏表紙のあらすじには「偽りの母子」「逃亡生活」という気になるキーワードがあるのですが(後ほどご紹介します!)、まさかまさか、誘拐した赤ちゃんとの逃亡生活だったんです。

計画的に誘拐しようと思っての事ではなく、不倫相手への思いを断ち切るために一目赤ちゃんを見るだけ…のつもりだったはずが、思わず連れ去ってしまうところから物語がスタート。

みずたま
みずたま

まさしく「衝動的」って感じ。

1章では希和子と薫の逃亡生活が描かれています。時代は1985年。情報社会である現代では不可能だと思う逃亡生活ですが、40年近くも昔ならば可能だったのかも知れないですね。

とりあえずは友人を頼り、その後はあてもなく名古屋へと向かう。何故かわからないけど「うちに来てもいい」という女の家に身を寄せる。

その後「エンジェルホーム」という怪しげな集団の元で、とりあえずの居場所を確保します。でもそのうち、エンジェルホームも安全ではなくなってくる気配が…。

時機を見てエンジェルホームを抜け出す時、ホームで懇意にしていた久美から実家の住所が書かれたメモを受け取ります。その住所を頼って、今度は小豆島へ。

誘拐犯が安心して暮らせる場所があってはならない。希和子のした事は決して許される事ではない。

けれど、希和子の視点で物語を読み進めていると、どうしても希和子に感情移入しちゃいますね。

みずたま
みずたま

良くないことだと承知していても、どうか薫との生活が続きますように…。

そんな思いで読み進めてたわ。

 

2章からは視点が成長した恵里菜(薫)に変わります。

母と思っていた女性は母ではなく、いきなり現れた見ず知らずの「本当の家族」との新生活。これまでとはまったく違う環境にいきなり放り込まれ、「誘拐されていた子供」という好奇の目で見られながら成長した恵理菜。

希和子の犯した罪の大きさは、恵理菜だけではなく恵理菜の家族全員の人生に及んでいる事を痛感します。恵理菜が誘拐されずにいたら、全然違う人生となっていたはず。

そして、2章では恵理菜と共にエンジェルホームで生活していた「マロンちゃん」こと「千草」も登場します。

彼女も異質な環境で育った事で、「普通」に成長することができなかったという心の傷を抱えて生きてきました。

自分で選んだ訳ではなく、どうしようもなく背負うことになってしまった悩みや痛み。消えることのない傷を抱えながらも、千草と恵理菜が共に成長してゆく姿には感動です。

それは女性が本能的に持ち合わせている「母性」が、一歩を踏み出す強さになっているのかな…と感じます。

恵理菜のお腹に新しい生命が宿っているという事実。皮肉な事に、新しい生命の父親である男性には妻子があり、現実的に父親にはならない人。

それでも、新しい命を宿した事で芽生えた母性によって恵理菜、そして千草の心にも変化が生じたのです。

八日目に生き残った蟬のほうがかなしいと思っていたけれど、七日で死んだ蟬には見られなかったものを見られる。見たくないものもあるけれど、ひどいものばかりではない。

そんな思いに至った千草の言葉に、彼女たちの未来に明るい光がさすように思えます。

考えてみれば『八日目の蟬』は、今年初めて読む女性作家さんの小説。ここのところ男性作家さんの小説ばかりを読んでいたので、なおさら「女性ならではの物語」だと感じました。

みずたま
みずたま

男性が読むとどんな感想を抱くのか、それも興味深い!

 

 

『八日目の蟬』のあらすじは?

どの小説もそうですが、裏表紙のあらすじって、とても興味をそそられますよね。それでいて、どんな話なのかはわからない。

『八日目の蟬』の裏表紙もそうなんです。すごく気になるけど、どういうお話なのかは予想できない。だから気になって読まずにはいられません!そんなあらすじをご紹介します。

 

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…….。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。

(『八日目の蟬』裏表紙より引用)

 

あらすじからわかるのは、「偽りの母子」は何かから逃げて生きていくストーリーなんだ…と言うこと。

でも「女たちにかくまわれる」って?転々と移動しながら、かくまわれ続けることなんてできる?そもそも「偽りの母子」って、どういう関係?

短い文章の中に気になる疑問が凝縮されているようなあらすじ。

みずたま
みずたま

読み始めてすぐに「偽りの母子ってこういう事か!」とビックリ。

 

でも「どう考えても逃亡生活なんて続くはずがない」と思って読み始めたのですが、1985年という設定なので違和感もなく「有り得る話」として話が展開します。

みずたま
みずたま

映画のほうも見てみたいかも!

 

 

感想まとめ

読み終わった後、しばらくは「切なさ」と「やりきれなさ」が消えませんでした。

恵理菜の未来にはきっと幸せが待っていると思えるのですが、何が切ない、何がやりきれないって希和子です!

希和子は誘拐犯。人の家庭の幸せを壊した誘拐犯。

それはそうなんだけど、希和子だって被害者ですよね…。

ここからはネタバレを含みますので、未読の方はスルーして下さい。

希和子は確かに罪を犯したけれど、彼女もかなりの被害者と言えます。加害者は不倫相手である「秋山 丈博」。さらにその妻である「恵津子」からも嫌がらせを受けていました。

恵津子の立場から見ると、夫と不倫している希和子が憎くて仕方がないのも当然です。嫌がらせをされる理由はあるにしても、それが誘拐の理由になった訳ではありません。

そもそも丈博が不倫をしなければ、希和子が不倫を終わらせようとした時に泣きついてこなければ、こんな悲しい事件は怒らなかったのでは?

つまり諸悪の根源は、希和子の不倫相手で恵理菜の父であった「秋山 丈博」ではないか!!

みずたま
みずたま

そう思わへん!?

妻との離婚をほのめかせて希和子との関係を維持し、離婚の計画の妨げとなるからと堕胎を説得する。

愛する男性に「きちんとしてから子どもを作ろう」とまで言われたら、彼との未来に期待してしまう希和子の気持ちもわかります。

泣く泣く堕胎を決意したというのに、たかだかその二ヶ月後には妻の恵津子の妊娠を丈博から告げられる。

さらに丈博の妻である恵津子からは、度々嫌がらせを受ける。

踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。

みずたま
みずたま

こんな酷いことある!?

これだけでも十分に辛い状況なのに、希和子は堕胎が原因で二度と子供を産めない身体になってしまうんです。

もし、堕胎せずに赤ちゃんを産んでいれば…….。そうしたら希和子は誘拐犯になることなどなく、我が子と幸せな人生を歩んでいたのではないか?

そう思うと、切なすぎる。さらに、フェリー乗り場で恵理菜と居合わせていたのに、お互いに気づかずにすれ違ってしまったのも切なかったです。

きっとこの先も、この2人が交わる事はないのかも知れない。でもせめて、恵理菜の「希和子も恵津子も等しく母であった」という気持ちが、どんな形ででもいいから、希和子に伝わって欲しいなと願います。

がらんどうでも生きていく希和子に、薫とは偽りではない母と子の愛情が築かれていたのだ…と知って欲しいです。

 

みずたま
みずたま

読書は紙の本がいい!と思ってたけど、お出かけ先の読書は電子書籍が便利かも…。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました